気に入った物件を見つけ、誰よりも早く購入申込書を提出した。仲介会社からも「一番手です」と聞いた。そうなれば「この物件は自分たちが買える」と考えるのが自然だと思います。

ところが、不動産取引では「一番手」=その物件を必ず買える権利ではありません。

そもそも「一番手」とは何か

一般に一番手とは、売主側が受け付けた購入申込みの順番が最初であることを指します。二番目なら二番手、三番目なら三番手です。

ただし、これは法律上の優先権を意味する言葉ではありません。購入申込書も、通常は売買契約そのものではありません。

「一番に申し込んだ」ことと、
「売買契約が成立した」ことは別です。

最終的に誰と、どの条件で契約するかを判断するのは売主です。売主が申込順を重視することは多いものの、順位だけで決まるとは限りません。

大きな窓から都市を望むモダンなリビング
気に入った物件ほど「一番手を取れた=安心」と思いがちですが、申込みはまだ契約ではありません。

一番手より二番手が選ばれるのは、どんなとき?

例えば、一番手が「100万円値引きしてくれれば買います」という申込みで、二番手が売出価格どおりの満額申込みだった場合。売主が二番手との契約を希望することは十分考えられます。

ほかにも、住宅ローンの事前審査が済んでいるか、契約日を早く確定できるか、引渡し条件が売主の希望に合うかなど、売主にとっての「確実性」が判断材料になります。

申込条件売主から見た主なポイント
満額での申込み価格条件が明確
価格交渉付き金額の合意が必要
住宅ローン事前審査済み資金面の見通しを確認しやすい
事前審査前融資可否がまだ読みにくい
契約日を早く確定できる契約まで進む確実性が高まりやすい

※実際の判断基準は売主・物件・取引条件によって異なります。上表は一般的な考え方です。

価格交渉をすると「一番手」ではなくなる?

価格交渉をしたから自動的に二番手になる、というわけではありません。

ただし、売主から見れば「5,000万円で売りたい物件に4,900万円で申込みをした人」と「5,000万円で買う人」が同時に現れれば、後者を選びたいと考えるのは不自然ではありません。

ここで難しいのは、値引きを取りにいくことと、物件を確実に押さえることが、ときに相反することです。

「少しでも安く買いたい」と
「この物件だけは逃したくない」。
どちらを優先するのか。

人気物件ほど、この判断は重要になります。価格交渉そのものが悪いわけではありませんが、競合状況を知らずに強い交渉をすると、その間に別の買主が入ることがあります。

住宅ローンの「事前審査」が効いてくる理由

売主にとって怖いのは、契約の話を進めたあとで「住宅ローンが組めませんでした」となることです。

そのため、複数の申込みが競合したとき、すでに住宅ローンの事前審査を通過している買主の方が、資金計画の見通しを示しやすくなります。

特に「良い物件が出たらすぐ動きたい」と考えている方は、物件を見つけてからローンを考えるのではなく、物件探しと並行して事前審査まで準備しておくことが有効です。

「一番手を取ったから、週末まで考えます」は危ない

申込みを入れたあとに、契約日をなかなか決められないケースがあります。

買主としては大きな買い物ですから慎重になるのは当然です。一方、売主側にはその間にも二番手、三番手の申込みが入る可能性があります。

「一番手なので待ってもらえる」と思っているうちに、満額・ローン事前審査済み・すぐ契約可能という別の買主が現れれば、状況が変わることがあります。

だからこそ仲介会社は、申込みを入れる前後で契約条件、資金計画、重要な懸念点をできるだけ早く確認する必要があります。

二番手でも、諦める必要はない

逆に、気に入った物件にすでに一番手が入っていた場合も、「もう絶対に買えない」とは限りません。

一番手が価格条件で折り合わない、住宅ローンの見通しが立たない、契約前に購入を見送る――こうした理由で話が戻ることはあります。

本当に欲しい物件なら、二番手として購入申込みを入れ、仲介会社から売主側へ購入意思を明確に伝えておく。さらに「一番手が進まなければすぐ連絡をください」と依頼しておく方法があります。

売れてしまったように見えても、
契約が終わるまでは状況が動くことがあります。

一番手を取ったあとに確認したいこと

「一番手です」と聞いたら、安心して終わりではありません。少なくとも、次の点は仲介担当者に確認しておきたいところです。

売主は申込みを受け付けているか。価格条件は合意できそうか。住宅ローンの準備は足りているか。契約日はいつまでに設定する必要があるか。ほかに申込みや問い合わせが入っているか。

もちろん売主側から開示されない情報もありますが、現在の状況を把握しているかどうかで、次の判断はかなり変わります。

大切なのは「順位」より「契約までの確実性」

不動産購入では、スピードが重要になる場面があります。しかし、何も確認せず急いで契約すればいいという意味ではありません。

物件調査や重要事項の確認を行いながら、住宅ローンを準備し、購入条件を整理し、必要な判断を早く行える状態にしておく。

それが結果として、欲しい物件が現れたときの強さになります。

「一番手を取ること」がゴールではありません。条件を確認したうえで、きちんと契約まで進められること。

不動産の申込みでは、この違いを知っておくだけでも見え方が変わるはずです。

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編集方針:本記事は不動産売買仲介の実務経験をもとに、一般的な購入申込みの考え方を解説しています。申込書の扱い、売主の判断基準、契約条件は個別の取引によって異なります。