まず、金利が1%上がると返済額はいくら変わる?
金利の「1%」は小さく見えます。しかし、数千万円を35年間借りる住宅ローンでは影響が大きくなります。
単純比較として、35年・元利均等・ボーナス返済なしで、借入期間中ずっと金利が変わらないと仮定し、0.7%と1.7%を比べてみます。
| 借入額 | 0.7%の月返済 | 1.7%の月返済 | 毎月の差 | 35年の差 |
|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 10.7万円 | 12.6万円 | +1.9万円 | 約798万円 |
| 5,000万円 | 13.4万円 | 15.8万円 | +2.3万円 | 約998万円 |
| 6,000万円 | 16.1万円 | 18.9万円 | +2.8万円 | 約1,198万円 |
※概算。元利均等返済、35年、ボーナス返済なし、諸費用等を考慮しない単純試算です。変動金利商品の実際の返済額変更ルール等は金融機関・商品によって異なります。
5,000万円なら、1%の差で毎月およそ2.4万円。35年間その差が続くという仮定では、総額で約1,000万円違います。
ただし、ここから「だから今すぐ買う」が
自動的に導かれるわけでもありません。
2026年9月、金利は本当に上昇局面なのか
日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移させる方針を決定し、9月24日から適用するとしています。
さらに日銀は、経済・物価情勢に応じて「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」としています。ただし、タイミングやペースは経済・物価・金融情勢を点検しながら判断するとしています。
つまり、「これから必ず何%まで上がる」と決まっているわけではありません。上昇方向のリスクを考える必要はありますが、未来の金利を断定して住宅購入を急がせるのも違うでしょう。
固定金利の一例では、2026年9月のフラット35(21~35年)の最頻金利は年3.46%です。全期間固定なら、借入時に返済終了までの金利と返済額が確定します。
では、金利が上がる前に「今すぐ買う」が正解?
金利だけを見れば、低いうちに借りられた方が有利です。
しかし、住宅購入では「金利×借入額」で考える必要があります。
仮に金利が低くても、焦って予算を500万円上げてしまえば意味がありません。反対に、将来金利が1%高くなっても、住宅価格が大きく下がれば総負担は軽くなる場合があります。
ただし、住宅価格が下がる時期と幅を正確に予想することもできません。
「買わずに待つ」なら、家賃はそのままなのか
購入を見送って賃貸住宅で数年間待つ。これはもちろん一つの選択です。
ただし、待っている間の住居費はゼロではありません。たとえば月15万円の賃貸住宅に5年間住めば、単純計算で900万円の家賃を支払います。
しかも、家賃が今後も同じとは限りません。アットホームが公表した2026年7月の募集家賃調査では、賃貸マンションの平均募集家賃は首都圏全エリアで全ての面積帯が前年同月を上回り、東京23区のカップル向きは14カ月連続で2015年1月以降の最高値を更新しました。
もちろん、募集家賃の上昇が既存契約の家賃にそのまま反映されるわけではありません。それでも、「住宅ローン金利だけが動き、賃貸側の条件はずっと固定」という前提では考えない方がいいでしょう。
賃貸なら「ずっと今の条件で住める」とも限らない
もう一つ、家賃以外に契約条件があります。
居住用住宅でも定期借家契約はすでに制度として存在します。普通借家では、貸主からの更新拒絶等には正当事由が必要ですが、定期借家は適法に契約されていれば、契約期間満了により更新なく終了する仕組みです。双方が合意すれば再契約はできます。
だからといって、今後、居住用賃貸が一斉に定期借家へ変わると予測しているわけではありません。現時点でそのようなことを断定できる根拠はありません。
ただ、店舗・事務所だけでなく、居住用にも制度は存在しています。将来の賃貸市場が現在とまったく同じ家賃・同じ契約条件であり続ける保証もありません。
実は「何もしない」選択ではありません。
インフレなら、不動産価格上昇で金利上昇分を取り返せる?
これは非常に気になるところです。
物価や建築費、土地価格などが上昇する局面では、住宅価格が上昇することがあります。実際、国土交通省は実際の取引価格情報をもとに不動産価格指数を公表しています。
では、5,000万円で買った家が将来6,000万円になれば、金利上昇による負担増は「ペイできた」と考えていいのでしょうか。
結果としてそうなるケースはあります。しかし、それを前提に住宅ローンを組むのは危険です。
不動産価格は全国一律に動きません。駅、地域、土地の形、マンションの管理状態、築年数、需給などで差が出ます。さらに自宅は値上がりしても、住み替え先も値上がりしているかもしれません。
自宅の値上がりは安心材料になり得ますが、毎月の住宅ローン返済を直接軽くしてくれるわけでもありません。
昔は、今では驚くような金利だった
過去の金利を見ると、今の感覚では驚く数字が並びます。
日本銀行の統計では、主要行の長期プライムレートは1990年9月に8.5%、10月には8.9%まで上昇しました。これは住宅ローン金利そのものではありませんが、当時の金利環境が現在とは大きく異なっていたことは分かります。
1980年には長期プライムレートが9.5%だった時期もあります。
もちろん、「昔はもっと高かったのだから今の金利は大丈夫」という話ではありません。住宅価格、所得、ローン商品、税制も違います。
ここで見たいのは別のことです。
借りた日の状態のままではありません。
住宅ローンは「借りた瞬間に35年間の戦い方が決まる」わけではない
住宅ローンは長期間の契約ですが、その途中で何もできないわけではありません。
金利環境や家計の状況が変われば、借換え、繰上返済、固定金利への変更を検討できる場合があります。住宅金融支援機構にも、全期間固定金利へ借り換えるフラット35借換融資があります。
ただし、借換えには審査があり、諸費用もかかります。将来必ず有利な条件で借り換えられる保証もありません。
ですから、「上がったら借り換えればいい」ではなく、借換えは将来使えるかもしれない選択肢の一つと考えるべきでしょう。
金利上昇時代を「サバイブ」する6つの考え方
実は「年齢」も待ってくれない
5年間待って金利や住宅価格が下がったとしても、自分も5歳年齢を重ねます。
金融機関には完済時年齢などの条件があり、年齢によっては希望する返済期間を取りにくくなる場合があります。返済期間が短くなれば、同じ借入額でも毎月返済額は増えます。
また、家族にとって「今必要な広さ」「子どもと一緒に暮らす期間」「通学環境」には時間があります。
住宅は金融商品である前に、暮らす場所です。最安値で買えたかだけで住宅購入の成功・失敗は決まりません。
結局、今買うべき? それとも待つべき?
ここまで読んでも、「で、どっちなんですか?」と思われるかもしれません(笑)。
でも、すべての人に共通する答えはありません。
今、必要な住宅があり、返済額に余裕があり、金利がさらに上がった場合も家計が耐えられ、その物件を長く持つ理由がある。そういう人にとっては、未来の金利が下がるまで何年も待つことが必ずしも合理的とは限りません。
反対に、予算ぎりぎりまで借りなければ買えない、数年以内に転居する可能性が高い、物件そのものに納得していない。それなら「金利が上がる前に」という理由だけで急ぐ必要はありません。
予想が外れても耐えられる住宅購入をする。
金利だけを見ない。それが金利上昇時代の住宅購入
住宅ローン金利は重要です。1%の差が、数百万円から1,000万円規模の違いになることもあります。
しかし、住宅購入を待つ側にも、家賃、家賃上昇、住宅価格、年齢、借入期間、そして賃貸条件の変化があります。
一方、購入する側には金利上昇、価格下落、修繕費、税金などがあります。
どちらか一方だけのリスクを見れば、結論はいくらでも作れます。
「いつ買えば一番得か」より、「外れても大丈夫か」。
金利が上がっても返せる。状況が変われば借換えや売却も検討できる。そんな余白を残した住宅購入こそ、金利上昇時代の一つの答えだと私たちは考えます。
ハウジングスカイ公式サイトへ日本銀行|金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)
日本銀行|長・短期プライムレート(1989~2000年)
日本銀行|長・短期プライムレート(1966~1988年)
住宅金融支援機構|フラット35 金利情報
住宅金融支援機構|フラット35 借換融資
アットホーム|2026年7月 全国主要都市の募集家賃動向
国土交通省|定期借家制度
国土交通省|不動産価格指数