まず、管理費と修繕積立金は役割が違います
どちらも毎月支払うため、ひとまとめに考えられがちですが、基本的な役割は異なります。
共用部分の清掃や管理、設備の保守など、マンションの日常的な管理・維持に使われるお金です。
外壁、防水、給排水設備など、将来の計画修繕に備えて積み立てていくお金です。
修繕積立金は「将来のマンションを維持するためのお金」。
ですから、「管理費より修繕積立金だけを見ればいい」という意味ではありません。どちらも重要です。
ただ、中古マンションを購入するときは、現在の月額だけでは将来負担が見えにくい修繕積立金を、もう一段深く確認しておきたいというのがこの記事のテーマです。
「修繕積立金8,000円」は、本当にお得でしょうか
例えば、広さや価格が似た二つのマンションがあったとします。
現在の負担は軽い。ただし数年後の増額が予定されているかもしれません。
現在は高く見える。ただし将来の修繕を見込んで、すでに一定水準を積み立てている可能性があります。
差額は月1万円。年間なら12万円です。Aの方が魅力的に見えるのは当然です。
しかし、Aが数年後に1万5,000円、さらにその後2万円へ引き上げる計画だったらどうでしょう。
反対にBは、今後も比較的安定した水準で積み立てる計画かもしれません。
もちろん実際の金額や改定はマンションごとに異なります。ここで大切なのは、現在の月額だけを比較しても、将来の負担までは分からないということです。
修繕積立金には「均等」と「段階増額」があります
国土交通省のガイドラインでは、代表的な積立方式として「均等積立方式」と「段階増額積立方式」が示されています。
均等積立方式は、長期修繕計画の計画期間に必要となる積立額を、計画作成時点で均等になるよう設定する考え方です。
段階増額積立方式は、当初の積立額を抑え、期間中に段階的に増額していく方式です。
国土交通省は、将来にわたって安定的に修繕積立金を確保する観点から、均等積立方式を望ましい方式としています。一方、段階増額積立方式では、予定どおりの引上げができず積立金不足につながるおそれがあることから、2024年6月のガイドライン改定で適切な引上げの考え方も示されました。
「どんな積立方式で、これからどう変わる計画なのか」を見る。
なお、均等積立方式だから将来絶対に上がらない、という意味でもありません。国土交通省のガイドラインでも、工事費の高騰などを踏まえ、長期修繕計画を見直して必要に応じて修繕積立金を引き上げる必要があるとされています。
中古マンションなら「長期修繕計画」を見たい
室内を見れば、キッチンの使いやすさや日当たり、収納量はかなり分かります。
でも、マンション全体で将来どんな工事を予定しているかは、室内を何度見ても分かりません。
そこで確認したいのが長期修繕計画です。
いつ頃、どのような修繕工事を想定しているのか。そのためにどの程度の費用を見込み、修繕積立金をどう積み上げていく計画なのか。購入判断ではこうした情報も重要になります。
そして、長期修繕計画は「あるか、ないか」だけでなく、いつ作成・見直しされたものなのかも確認したいところです。
「計画がある」だけでも十分ではありません
長期修繕計画は将来の計画です。実際の工事費が計画作成時の想定どおりになるとは限りません。
資材費や人件費などの変化によって工事費が上がれば、計画の見直しが必要になることもあります。
そのため中古マンションでは、計画だけを見るのではなく、可能であれば現在の修繕積立金残高、今後予定されている工事、積立金の増額予定などもあわせて確認します。
「今の積立状況を含めても現実的か」を見る。
大規模修繕が終わったばかりなら安心?
「昨年、大規模修繕工事を実施済みです」と聞くと、購入する側には安心材料に感じられます。
実際、建物の維持管理という意味では重要な情報です。
ただし、購入判断ではもう一歩先も見ます。
その工事にいくら使い、工事後に修繕積立金がどの程度残っているのか。
マンションの修繕は、一度大規模修繕を行えば終わりではありません。次の修繕もやってきますし、建物によっては給排水設備、エレベーター、機械式駐車場などにも将来費用がかかります。
ですから「大規模修繕済み」という一言だけで判断せず、その後の資金計画まで確認できると安心です。
修繕積立金の「残高」も、月額とセットで考える
同じ月1万5,000円のマンションでも、これまでどの程度積み立てられてきたかによって状況は違います。
さらに、修繕積立金の滞納がある場合には、管理組合の資金計画に影響する可能性があります。
個別のマンションでは、総戸数、築年数、建物規模、設備、過去の修繕履歴など条件が異なるため、「残高が○円なら安全」という単純な線引きはできません。
だからこそ、月額・残高・長期修繕計画を別々に見るのではなく、セットで見ることが大切です。
機械式駐車場や共用設備も、将来の維持費と無関係ではありません
マンションによっては、機械式駐車場、エレベーター、共用ラウンジなどさまざまな設備があります。
便利で魅力的な設備ですが、当然ながら維持・更新には費用がかかります。
特に機械式駐車場などは、設備の維持更新だけでなく、利用状況によって駐車場収入が管理組合の収支に影響するケースもあります。
「設備が多い=悪い」という話ではありません。そのマンションが持つ設備を、将来も維持していくための計画があるかを見るということです。
住宅ローンだけで「毎月いくら」を考えない
マンション購入では、どうしても住宅ローン返済額に目が向きます。
管理費 15,000円
修繕積立金 10,000円
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毎月 145,000円
この状態で購入しても、将来修繕積立金が2万円になれば、毎月の住居費も変わります。
もちろん将来の金額を完全に予測することはできません。
ただ、すでに増額予定が決まっている、あるいは長期修繕計画上で段階的な増額を予定しているのであれば、それは購入時の資金計画に入れて考えたい情報です。
「10年後にいくら払っている可能性があるか」。
購入前に、最低限ここを確認したい
実際に入手・確認できる資料や情報は、売主、管理会社、媒介状況などによって異なります。分からない項目があれば、仲介会社に「確認できますか」と聞いてみてください。
では、修繕積立金が高いマンションは避けるべき?
ここまで読むと、「修繕積立金が高いマンションは負担が重いから避けよう」と思うかもしれません。
でも、それも単純ではありません。
将来必要になる修繕費を現実的に見積もり、必要な水準をきちんと積み立てているから現在の金額が高い可能性もあります。
逆に、現在の負担が非常に低くても、それが将来の値上げを前提にした金額なら、単純に「お得」とは言えません。
「このマンションを維持していくために足りるか」で見る。
中古マンションは「部屋」だけを買うわけではありません
中古マンションを内見すると、どうしても室内に目が向きます。
キッチンが新しい。リビングが明るい。眺望がいい。収納が多い。
もちろん、それはとても大切です。
でもマンションを購入するということは、自分の部屋だけを買うことではありません。
建物全体を、ほかの区分所有者と一緒に維持していく立場になることでもあります。
その意味で、修繕積立金は単なる「毎月の出費」ではありません。
建物をこれからどう維持していくのか。その計画の一部です。
結論。「管理費より修繕積立金」ではなく、修繕積立金は一歩深く見る
管理費も修繕積立金も、マンションを所有するうえで大切な費用です。
ですから、管理費は見なくていいという話ではありません。
ただ、修繕積立金には「現在の金額」だけでは見えない将来の要素があります。
積立方式はどうなっているか。増額予定はあるか。長期修繕計画は現実的か。現在の積立状況はどうか。
中古マンションを比較するときは、月額の安さだけで判断せず、そこまで確認してみてください。
その1万円が「何のために、どこまで備えられているのか」を見る。
それが、中古マンションを長く安心して所有するための大切な判断材料になります。
マンションは、室内だけでなく
「管理」と「将来の修繕」まで見て選ぶ。
気になる中古マンションがあれば、管理費・修繕積立金、長期修繕計画なども含めて購入判断を整理できます。
ハウジングスカイ公式サイト国土交通省|マンション管理に関する各種ガイドライン等
国土交通省|2024年6月7日 ガイドライン改定について